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クロトンビルの役割は、しばしば誤解されているように、単に教育をするというだけではない。 コミュニケーションをとり、信頼感を養うところに重点が置かれていることに注意すべきである戦略で注目された。
しかし、この外封GEの改革は、当初、あらゆる事業をグローバル市場でシェア第一位、または第二位の事業にする、この基準を満たさない事業は立て直す、売却する、あるいは閉鎖するという、その大胆で鮮明な例えば、大胆な外科手術をすることも厭わないJ・W会長の印象は「戦略家」というものである。 しかし実際にはその時間の半分以上を人とのコミュニケーションにとり、毎月二回はリーダーシップについて自ら講義をするなどということは、あまり知られていない。
J・Wは、ある意味では企業における人の存在の意味を最もよく理解している経営者の一人であり、いかにして人の持つ可能性を引き出せるかという、人を中心とした経営をしているからこそ、これほどの成功を収めているのだ。 多くの企業が、GEの成功を見て、その先例に従って自らの企業を変えようとしてきた。
日本の企業のなかにも、GE的な手法を取り入れているところは少なくない。 しかし、そのほとんどが戦略的なハード変革手法に注目し、それを真似るにとどまっているというのが実態である。
しかし、J・Wが二十年かけてつくり上げてきた、人を中心とする企業文化の意味を知ることなしにGEを理解することは不可能なのだ。 日本企業がハード変革手法にのみ注目する理由の一つは、マスコミ的に取り上げられるのは、いつも派手な印象のある戦略的なハード変革手法でしかないということも影響しているように思える。
遅れる日本の企業風土改革企業文化、つまり、企業改革のソフトの部分に対する認識というのは、それがもともと見えにくい部分であるために、必ずしも容易ではない。 この事情はアメリカにおいても同じようなものかもしれない。
アメリカでもGEのような成功を収めている企業はそう多くはないからである。 しかし、そうは言っても企業文化の改革への関心は、明らかにアメリカのほうが日本を上回っている。

例えば書籍を見てみると、一九八○年代から企業文化・風土の変革に関する書籍がアメリカでは多数出版きれ、かつまたベストセラーになっている。 日本的経営手法、雇用慣行を礼賛する、W・Oが一九八一年に出した『セオリーZ』や、R・PとA・Eの『ジャパニーズ・マネジメント』が注目され、八二年には、人間性を大切にする文化を持つ企業は、アメリカにおいても最も成功していることを明らかにしたT・PとL・Wの『エクセレント・カンパニー』が話題をさらった。
一方では、八○年に出されたM・Pの『競争の戦略』をはじめとする戦略論も相変わらず盛んであったが、八○年代に台頭したウォルマートなどの成長企業にポーターが挙げた成功条件はあてはまらず、その理論は力を失っていった。 これらの企業の成功の源泉は企業文化・風土にあり、社員にビジョンが共有されていることに特徴があった。
九○年にはP・M・Sが、『最強組織の法則』(T、九五年)という本を出し、「ラーニング・オーガニゼーション(学習する組織)」という考え方を説いてベストセラーになった。 この本は、日本的経営の組織力の強さに学び、チーム学習、ビジョンの共有など五つの原則を実践するソフトな変革手法を解説したものだ。
個を活かすのでなく、過度な個人主義が組織を弱めていることへの危機感を感じていたアメリカのビジネスマンが敏感に反応した。 九二年にベストセラーになった『J・WのGE革命』(N・M・T/F・S著、東洋経済新報社、九四年)は、GEの改革のほぼ全貌をとらえているひるがえって日本を見てみると、Sの邦訳本もあまり話題になることはなく、ベストセラーに名を連ねることもなかった。
『J・WのGE革命』はたしかに売れたが、注目されたのはハードの改革部分のほうであった。 なぜ日本では企業文化・風土の改革に関して注目度が低いのだ。
その理由の一つは、日本的経営の強さとして語られてきたものが人を大切にする、チームワークがいい、など一見、人に関連するものでありながら、結局光を浴びてきたのは終身雇用にしても、企業内組合、年功序列にしても、仕組みの部分であったということである。 が、このなかには企業文化・風土改革に関する記述も多い。
九三年にはM・HとJ・Tの『リエンジニアリング革命』(N社、九三年)が出版され、一大ブームを巻き起こした。 これはTQM、JIT、リーン生産方式など日本的な手法を採り入れた業務プロセス革新を説いたものであったが、導入した企業の多くが失敗していることがしだいに明らかになった。
その失敗の原因はハードの改革ばかりが先行し、変化を恐れる社員の気持ちを無視して進められたことにあった。 このため一段と人間的なソフトの改革手法が脚光を浴び、ラーニング・オーガニゼーションやコーチング、メンターなどの本が盛んに出版され、ベストセラーになった。
これらの本に代表されるように、一人ひとりの普通の人間の持っている可能性を最大限に発揮しうるような新しい組織力に関する関心は、急速にアメリカに浸透し、マネジメントの中心的な概念の一つとしての位置を占めていった。 「人を活かすとはどういうことか」についての本質的な議論はまったくと言っていいほど、なされることはなかった。

「人を大切にする」ことと、「人間関係を大切にする」という本質的にまったく異なったことが混同されて使われるという低レベルの議論が、当たり前のように横行していた。 みんなで歩調を合わせることで満たされる「組織力」が日本的な仕組みから生まれてくる、というのはたしかにその通りなのである。
しかし、それに安住しているとみんなで歩調を合わせることによる一定の前向きの姿勢や安定は持ち得ても、今までの成功を常に否定し破壊しながら新たなものを生み出すといった「進化する機能」を自らのなかから排除してしまう、という大きな問題を抱えていたことに気がつく人はほとんどいなかった。 日本的経営が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」としてもてはやされた頃、たしかに日本的経営には組織力があるとされた。
しかしその評価に酔いしれて、その組織力の持つ本当の中身、その問題点に関して、真剣に突き詰めることがなかったことが、アメリカで脚光を浴びた新たな組織力に対して日本が関心を向けなかったことの一つの要因だろうと思われる。 その結果、日本での経営改革のテーマとしては、常にリストラクチャリング、リエンジニアリング、サプライチェーンといったハード変革に関するものが話題の中心を占めることになり、「人」の問題は実質上片隅に追いやられてしまうことになった。
日本の普通の会社では今なお高度成長期に理想とされた人物像の影響が色濃く残っている。 それなのになぜその普通の会社でお互いに協力し合うといった前向きの姿勢がなくなってしまったのだろう。
右肩上がりの時代は、外部の環境条件にそれほど大きな変動はなく、基本的に量的な拡大を追い求めていく時代であった。 外部の環境にあまり大きな変化がないということは、仕事の目標にもそれほど大きな質的変化はなく、ほとんどの場合、過去の延長線上での仕事の仕方が通用してきた。

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